・概説
小笠原諸島(おがさわらしょとう)は、東京都特別区の南南東約1,000kmの太平洋上にある30余の島々である。日本の国土で、東京都小笠原村の区域と完全に一致する。総面積は104km²。父島、母島、硫黄島、南鳥島以外の島は無人島である。その内、一般住民が居住しているのは父島と母島のみであり、硫黄島には自衛隊、南鳥島には自衛隊・気象庁・海上保安庁の施設があり、その職員等のみが業務目的で常駐している。
・小笠原諸島は以下の島々からなる。
小笠原群島
聟島列島 – 聟島、嫁島、媒島、北ノ島 他
父島列島 – 父島、兄島、弟島 他
母島列島 – 母島、姉島、妹島 他
西之島
火山列島(硫黄列島) – 北硫黄島、硫黄島、南硫黄島
孤立した島々 – 南鳥島、沖ノ鳥島
・自然
気候は、聟島(むこじま)列島・父島列島・母島列島・西之島では亜熱帯に、火山列島・南鳥島・沖ノ鳥島では熱帯に属する。それに併せて太平洋側気候・海洋性気候にも属する。年間を通じて暖かく、夏と冬の気温差は少ない。台風は、発生しない2-3月頃を除いてやってくるため、「台風シーズン」というものは無い。梅雨前線はこの地の北に現れ、太平洋高気圧の支配下となるため北海道と同様に梅雨が無い。日本全国で唯一気象に関する注意報・警報が発表されていなかったが、2008年3月26日から発表されるようになった。
小笠原諸島は形成以来ずっと大陸から隔絶していたため、島の生物は独自の進化を遂げており、東洋のガラパゴスとも呼ばれるほど、貴重な動植物が多い。しかし、人間が持ち込んだ生物や島の開発などが原因でオガサワラオオコウモリやオガサワラノスリ、アカガシラカラスバト、ハハジマメグロなどの動物やムニンツツジ、ムニンノボタンといった植物など、いくつかの固有種は絶滅の危機に瀕している。1980年(昭和55年)3月31日に国指定小笠原諸島鳥獣保護区(希少鳥獣生息地)に指定された(面積5,899ha、うち特別保護地区1,331ha)。
周辺の海域では鯨やイルカが生息しており、それらを見るために島を訪れる人も多い(小笠原村#名所・旧跡・観光スポット・祭事・催事を参照)。 ヤギも生息する。 ハブが、生息しているかは不明である。
・米軍施政下の小笠原
米軍政時代にはアメリカ海軍の基地が設置され、物資の輸送は1ヶ月に1回グアム島からの軍用船によって行われた。欧米系住民は戦前の土地区画に関係なく決められた区画に集められ、その多くは米軍施設で働いた。島民の自治組織として五人委員会が設けられた。島の子供たちは、軍の子弟のために1956年に設立されたラドフォード提督初等学校で軍の子弟と一緒に学び、高等教育はグアム島で行われた。米軍によって戦前の土地区画に関係なく決められた区画に集められたことは、日本返還後も効率的な開発の都合から踏襲され、戦前の土地所有者との補償交渉で揉めることとなった。後に、日本政府の意向を無視して父島に核兵器の貯蔵施設が作られていたことがアメリカの情報公開によって知れ渡った。軍政時代に数基の核弾頭が保管されていたという。1950年代にも国務省が小笠原の日本返還を検討したが、アメリカ海軍を始めとする国防総省が反対したため、頓挫した。その理由は核兵器の保管が理由だったという。多くの欧米系住民の子弟が、日本語教育の困難な問題により返還後、多くが米国に移住した。
・言語
欧米系住民が話していた英語の語彙と日本語八丈方言、日本語標準語が混合された独特の日本語新方言(「小笠原方言」と呼べる)が存在する。テレビ放送の影響により、現在では日本語共通語に近くなっている。言語接触の結果によるピジン言語・クレオール言語として扱う説がある。
・民謡
大和民族的なものと、ミクロネシア系民族の影響を受けたものが共存する。後者の民謡は『南洋踊り』と呼ばれ、2000年に東京都指定無形民俗文化財となった。
・食
固有の植物や海産物が多く採れ、ボニンコーヒー、海亀肉、島魚を使った焼き物・煮物・島寿司・味噌汁・ピーマカ(酢漬け、ビネガーの転訛)、パッションフルーツ・マンゴー・パパイヤ・グァバなどを用いたデザートやリキュール、ダンプレン(ダンプリング、欧米系住民の食文化)などがある。
・産業
小笠原の就業者のうち公務員が3割を占め、観光業や飲食業などを加えて第三次産業従事者が7割超である。以下第一次産業が1割、第二次産業が2割となっている。基本的には公務員の給与、都や村の発注する公共工事及び観光によって成り立っていると言える。かねてから要望のある空港建設による土木関係の雇用創出や、空港開設後の来島者増加による観光業の発展を期待する人も多い。
パッションフルーツ、レモン、マンゴー、コーヒー(日本では沖縄と小笠原のみ)の栽培のほか、はちみつ、塩、ラム酒の製造も行い、土産のほか本土にも出荷される。サツマイモやアサガオなど一部の農産物や植物は本土には存在しない害虫の移出を防ぐため、諸島外への持ち出しに厳しい制限がある。
・教育
父島に小笠原村立小笠原小中学校と東京都立小笠原高等学校、母島に小笠原村立母島小中学校があり、初等教育及び中等教育の教育機関は揃っているが、高等教育を受けるために島を離れる子供は多い。孤島ゆえに教員の数も不足しがちで、NHK学園・放送大学などの通信教育を積極的に活用するなど質の高い教育を維持するための模索が続いている。最近、小笠原でも生涯学習機関設置の要望が高まってきており、どのようにすべきか検討されている。
・ショッピング
本土からの物資輸送は定期船「おがさわら丸」(通称:おが丸等)入港日に商店に品物が入荷されるため、その直前は販売品が少なく、小笠原諸島では曜日に関係なく、船の入港日に合わせた活動が行われている事例がある。都では生活必需品に限り運送費を補助し、価格の安定化を図っている。
物流面の制約からファストフード店やコンビニエンスストアといったチェーン店は存在しないが、個人経営の食堂や商店等はあり、食料品や日用品も販売されている。書店はなく、購入できるのは商店で売られているごく限られた雑誌や書籍のみである。新聞の宅配もなく、おがさわら丸の入港時に一週間分の新聞がまとめて商店に並べられる。
※父島
スーパーマーケット、レストラン、薬局などは揃っている。父島の農協(JA)直売所では諸島内で収穫される亜熱帯果物が手に入る。現金自動預け払い機(ATM)は東京島しょ農業協同組合(JA東京島しょ)小笠原父島支店と小笠原郵便局、銀行系カードは七島信用組合小笠原支店で利用可能。かつては富士銀行が存在した。クレジットカードなどによる現金引き出しはゆうちょ銀行ATMでのみ利用可能。自動販売機はあるが缶飲料が120円~140円、ペットボトル飲料は500mlのもので150円~160円程度と若干高め。
※母島
飲食店、商店がJA・漁協売店を含めて数軒、鮮魚店とガソリンスタンドが各1軒存在する。「飲み屋」を除いては概ね夕方までの営業である。日曜・休日定休がほとんどで、鮮魚店は売り切れると閉店する。理髪店も無いが、父島から理容師が定期的に来島する。ATMはJA東京島しょ小笠原母島支店があり、銀行・郵便局のキャッシュカードは使えるが手数料がかかる。